前立腺肥大症とは
前立腺肥大症の主な原因に、加齢に伴う前立腺の肥大が挙げられます。50歳頃から発症が増加していき、組織学的には50歳で約30%の方が、70歳では約80%以上の方が発症するとされています。ほとんどの男性は避けては通れないものとされています。しかし、治療が必要でないことも多く、治療が必要な方は全体の羅患者のうち、20~30%前後とされています。
原因
前立腺肥大症の原因は、現在のところ明確には分かっていませんが、加齢や炎症、虚血、内分泌環境の変化などではないかと言われています。
症状
前立腺肥大症の症状は大きく、排尿症状、畜尿症状、排尿後症状の3つに分けられます。
排尿症状
- 力まないと排尿できない
- 尿が勢いよく出ない
- 尿の出始めが悪くなる
- 排尿の最後には雫のようにボタボタ出てしまう
蓄尿時症状
(尿を溜めてる時の症状)
- 尿失禁を起こす
- 頻尿
- 夜間頻尿
排尿後症状
- 排尿後に尿が漏れ出す
- 残尿感
進行した前立腺肥大に伴う合併症
尿閉
尿閉とは、急に尿が出なくなる症状で、抗不安薬や感冒薬、抗不整脈薬などの薬のほか、アルコールなどが原因となって起こることもあります。
肉眼的血尿
肉眼的血尿とは、膀胱出口付近から前立腺部の尿道血管などで、肉眼で見えるほどの出血を起こしている状態です。
反復性尿路感染症
残尿によって慢性的な尿路感染が発症することがあります。
膀胱結石
尿路感染症や残尿が生じると、膀胱結石の原因となります。
溢流性尿失禁
膀胱容量を超える残尿が溜まると、尿が溢れて漏れ出る溢流性尿失禁になることがあります。
水腎症・腎機能障害
残尿が慢性的になってくると、膀胱内の圧力が上昇して腎臓負担が高まり、腎機能に障害が出てしまうことがあります。
検査
問診
問診では患者様の病歴や症状を丁寧にヒアリングします。症状は国際前立腺症状スコアー(IPSS)に従って点数化し、状態の程度を区分します。
検尿
検尿で血尿や尿路感染症の有無を検査します。
採血
前立腺肥大症が進行している場合は、腎機能障害のリスクが高いため、必要に応じて以下の検査を実施することがあります。
- 腎機能検査
- PSA検査:前立腺がんの腫瘍マーカー
直腸診
直腸診では、肛門から直接前立腺を触診して、前立腺の肥大の程度や他の疾患が発症していないかを確認します。
残尿検査
排尿後の残尿を検査します。
超音波検査
超音波を当てることで、前立腺肥大の程度を確認します。
尿流測定
尿量測定は、排尿の勢いを測定する検査です。装置に向かって排尿するのみの簡単な検査で、言葉では説明しづらいものを数値で正確に測定できます。
治療
前立腺肥大症は加齢によってほとんどの方が発症する疾患ですが、日常生活で困るような状態であれば治療が推奨されます。治療では、主に薬物療法と手術療法で改善を試みます。
主な薬物療法
α₁遮断薬
α₁遮断薬は最も使用される薬で、膀胱出口(膀胱頸部)や前立腺の筋肉の緊張を緩め、改善効果は比較的に早期に現れます。主な副作用として、起立性低血圧が挙げられます。
5α還元酵素阻害薬
5α還元酵素を阻害することで、前立腺の萎縮を阻害することが期待でき、効果は6ヶ月後くらいに現れます。5α還元酵素は男性ホルモンであるテストステロンが活性化させ、ジヒドロテストステロンに変化させる働きがあり、前立腺を肥大化させてしまいます。注意点として、薬を服用することでPSA(前立腺がん腫瘍マーカー)が50%程減少するので、投与前後にPSA検査が必須となります。
PDE5阻害薬
PDE5阻害薬は投与量によっては前立腺や尿道の筋肉を緩める働きがあり、元々はEDの治療に使用されていました。注意点として、循環器系への作用があるので、循環器疾患を患っている方には使用できません。また、処方にあたって残尿検査や尿流測定が必須となります。
その他の薬物療法
その他に薬物療法で使用される薬には漢方薬などがありますが、科学的に治療効果は示されていないです。ただし、臨床的には効果があるという意見もあります。
主な手術療法
ホルミウムレーザーやツリウムレーザーによる経尿道的前立腺核出術(HoLEP、TuLEP)
レーザー前立腺核出術は、レーザーを使用して前立腺を剥がして摘出する手術で、出血が少ないので前立腺体積が大きい場合でもスムーズに手術を行えます。
その他の低侵襲手術
経尿道的前立腺レーザー蒸散術(PVP)、経尿道的水蒸気治療(WAVE)、経尿道的前立腺吊り上げ術(ウロリフト)など最新式の低侵襲治療についてもご本人の全身状態、既往歴、年齢などを考慮して検討し、適応があれば紹介致します。